夢を見ていた。 
 エミュレイターと戦う夢。 
 頭上に輝く紅い月。 
 異形のバケモノを手にした剣で叩き斬る。 
 立ちふさがる者みな斬り捨てる。 
 頭上に輝く紅い月。 
 小柄な少女を斬り捨てる。 
 頭上に輝く紅い月。 
 見渡す限り赤い世界。気づけば立っているのは自分だけ。 

 ……頭上に輝く紅い月。 

 そこで目が覚めた。 
 時間は深夜。窓から射し込むのは柔らかく白い月の光。 

「……主よ……」 

 疲れているのは分かっている。慈悲と寛容を説くべき自分が、戦いに明け暮れ……目つきはギラつき、口元は歪んだひどい凶相となってしまった。 
 このところ近所の子どもたちも自分から遠ざかっているようだ。 
 そういえば、夢で最後に斬った少女はもうずいぶん前から遠巻きに自分を見ていなかったか。 
 気づかれるのを恐れて彼女を斬った……? 
 いやいや、そんなばかな。自分の未熟を感づかれたからといって何故斬り殺したりしなければならない。 
 本当に疲れているようだ。 
「顔でも洗って、寝直すとしましょう……」 

 そう、あれは悪い夢だ。 
 夢ならば……朝には……消え…… 


「…………」 


 また、あの少女だ。 
「あ……か……」 
 何を言っている? よく聞こえない。 
 手に剣を構える。 
「眠りこそ救い。そう人は言う」 
 そう、自分は眠っていたはずだ。 
「けれど、あしきゆめは人を蝕む」 
 そう……嫌な夢を見た。 
「夜闇に戦う魔法使いたち。心せよ」 
 踏み出し、剣を振りかざす。 
「あしきゆめを狩るものこそが、あしきゆめにもっとも近い」 
 また彼女を斬れば夢は終わるだろう。 
「されど、人の子よ。安堵せよ」 
 剣を振り下ろ 
「夜の眠りは、我らが守るゆえ」 
 世界の平衡が失われる。衝撃。気がつけば自分は地面に倒れていた。 
 胸の上に柔らかく重みがかかる。 
 そこには、奇抜としか言いようのない恰好──紺の布地で作られた水着のような服の上から各所を気まぐれにベルトで締め付け、さらに上からマントを羽織る──をした、あの少女が乗っていた。 
 これが夢だからなのか、それとも少女が見た目以上に軽いせいなのかは分からなかったが、一人分の体重が乗っているというのに苦しさは感じない。 
 むしろ、子どもを寝かしつける時に乗せられる母の手のような優しさすら感じる。 
 だが、同時に…… 
「ううっ……!」 
 固くなり始めていた分身の上に足が乗せられる。 
 そう……不思議な力で組み伏せられ、体の上を歩き回られるという状況に、自分は欲情していた。 
「う……うあっ……」 
 踏みつけられた。押さえつけられる痛みと、それを上回る、柔らかな足裏で擦られる快感で分身がさらに固くなる。 
 今自分はひどく情けない顔をしているに違いない。 
 少女は軽蔑しているだろうか。こちらに背を向けているのでその顔を見ることは出来ない。 
 上に立つ少女を見やったときに翻ったマントから覗いた白い尻が、欲情に輪をかける。 
「ぐうっ……! ふっ……!」 
 いつの間にかズボンも下着も消えており、カチカチにそそり立ったモノを直接擦られていた。 
「我慢すること……ない……」 
 土踏まずで亀頭を撫で回し、足指で袋を揉み、かかとで根本から先までなぞり上げられる。 
「ぐぅぅぅっ……!」 
 そのたび、腹筋の上でバランスをとるべく小刻みに動いて押しつけられる足裏さえ快感を助長し……限界はあっさり訪れた。 
「うぉぉうっ!」 
 びゅっ、びゅるっぅぅぅ! 
 白濁が勢いよく吹き出した。 
「……っく、はぁ、はぁ……」 
 放出の快感に言葉も無い。 
「ずいぶん溜まっていた……ね……でも……まだ」 
「ぐぅっ!?」 
 腹の上に座り込んだ少女が、欲望を吐きだした直後の男根を無遠慮に握る。それだけで再び固さを取り戻す自分の分身。 
「や、止め……!」 
「もっと……素直に吐きだしなさい……ちゅっ」 
 口づけされた。見ることは出来ないが、音と、敏感な器官に伝えられた吸い込まれるような刺激に教えられた。 
 自分の上に腹這いになった少女の、未成熟ながら柔らかな感触と相まって、先ほど足で擦られた時よりはるかに早く高まる。 
「んっ……れろ……ちゅぅっ……んー……」 
 口づけ、舐め、吸い、くわえ。唇のみならず、舌や頬、鼻づらまでこすりつけているようだ。 
 こんなことは止めなければならない……だが、四肢はこわばったまま思うように動かず、わずかに発することが出来た制止の言葉も今は声にならない。 
「押さえつけてはだめ……聖なる力も万能ではないのだから……むー……んっ」 
 飲み込まれた。そう思った。 
「ぐっ……ああ……っ!」 
 暖かな感触に包まれた瞬間おもわず腰が跳ね、少女の喉まで突き刺そうとした。 
「ぐぅ……んっ」 
 当たった場所がわずかに締め付けて来、すかさず男根全体を舐め上げられるような感覚。 
「うわぁぁぁぁっ!」 
 喉奥に噴き出した。止めるなどもはや思いも寄らない。 
「……っ、んんっ、んくっ……んっ」 
 飲んでいる。飲まれている。 
「主よ……お許しを……」 
 悔恨の言葉が漏れる。それは、犯してしまった罪と。 
「オナンの罪が……心配……? なら……次からは……ここに全部……」 
 これから犯す罪のための祈り。 
 こちらを見返りながら水着の股布をずらし、秘所をその指で広げる少女はそれに気づいているのか。 

 ──もう、止まらない。 

 手をかけて持ち上げた少女の体は、とても小さく、軽かった。 

「……ーーーーっ! はぁっ……!」 
 位置を合わせて、落とす。突き刺さった分身が熱いぬめりと固さの残る媚肉がもたらす摩擦で打ち震えた。 
「はー……っ、はー……っ」 
 少女の浅い呼吸さえ振動として伝わり、快感の源泉と化す密着感。 
 それだけでも目が眩むような快楽だが、少女によって目覚めさせられた獣欲はより強い刺激を求める。 
「っは……っ! あぅっ! ……あぁーーっ!」 
 びくり、と跳ねた腰が少女の肢体を振り回す。振り落とされまいとするかのように媚肉が締め付けを増し、それに搾り取られるように射精した。 
 胎内に撒き散らした精がぬめりを増し、絶頂感で震える秘所が強すぎず弱すぎない、充分な刺激を与える。 
「ん……まだ……」 
 繋がったまま固く、大きくなる過程でまた射精する。 
 腰から溶けて、吸い込まれているような感覚。 
 精を放つたび、意識が溶けて行き。 
 なにもかもを白い夢にゆだねて…… 



「今日はずいぶんとお元気そうですね」 
「……『今日は』ということは、ここのところそんなに元気なさそうに見えていましたか」 
 朝食の用意をしてくれているシスターとそんな会話を交わす。 
 確かに、エミュレイター狩りの任務が忙しかったのと……おかしな夢を見ていたせいか疲れが溜まっていた自覚はあった。 
「なに、良く眠れましたのでね」 
 そう。昨日の夜はおかしな夢も見なかった。 
 神の恩寵だろう。今日は念入りに礼拝をしておこう。 

「……敵を愛し、憎むものに親切にせよ。呪う者を祝福し、はずかしめる者のために祈れ……」 

 聖書の一節を唱える堂々とした声には優しさが満ち、参拝者を見守る瞳からは凶相が消えている。 
 この時間は少女にとっても心安らぐひとときだった。 
 異変を察知したのは一週間前。「あの」方法に踏み切るのには勇気が必要だったが、夢使いとして未熟な少女に取りうる最善の方法だった。 
 ──フロイト法。俗にそう呼ばれる、ストレスを性衝動に変換して発散させる夢使いの秘儀。 
 効果は非常に高いものの、術者への疲労が大きいことと、夢を月匣と見なして侵入し、他者の協力を得ることもできる《夢語り》が開発されて以来時代遅れとして廃れていた。 
(……ウチは、貧乏だからね) 
 ウィザードとしての報酬を孤児院の経営に回している神父や、おおっぴらに仕事を受けられない夢使いの少女では優秀な夢使いを呼ぶことは難しかったし、聖職者の精神汚染は時間との戦いだった。 
(ま、成功したし) 
 夢のフィードバックで痛む下腹部を押さえながら、満足げに微笑む少女。 
 想いは夢となり、夢は現実を塗りかえる。 
 少女の想いはどうにか悪夢を退け、幸せな現実を呼んだようだ。 
 気が付けば礼拝は終わっていた。 
「──お父さん♪」 
「……いや、わたしは確かに神父(father)だけどね……」 
 飛び込む少女にあの夜の妖艶さは無く、困り顔で、それでも笑って抱き留める手にあの夜の激しさは無い。 
((あれは、夢……)) 
 束の間の夢が覚めたなら 
「「──っ!!」」 
 そこには、紅い月。 
 そう。世界は──狙われている!
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