ある土曜日。キッチンから漂うバターの香りで少女が目を覚ましたのは、昼に差し掛かる前の事であった。
「……おはよ」
「お早くないよ。もう昼だ」
「早寝早起きの吸血鬼なんて居ないわ」
「寝たのは僕と同じ時間じゃないか」
「人間も言ってるでしょ、『寝る子は育つ』って」
「子って……君は『永生者』なんだろ? 僕よりずっと年上のくせに」
人造人間の少年は昼食のオムレツを作りつつ思う。習慣となったこのやり取りにもすっかり慣れた。少し前はこんな
軽口を交わす相手も、同居人の存在すら想像もしなかったというのに。
少年が住んでいるのは通っている中学校の寮の一室。小学校から高校までエスカレーター式のこの学園は、ウィザー
ドの組織下に作られたもので、ウィザードの生徒に対して何かと便宜を図ってくれる。例えば人造人間は身体機能の調
整の為に定期的に行う処置があるのだが、そのための設備を格納する為に二人部屋の寮を一人で使わせて貰ったり……
といった具合だ。
そんな折、学園近辺で起きたエミュレイターがらみの事件が起きる。そしてその解決の為に彼に指示が下り、そのパ
ートナーとして組んだウィザードがこの少女だった。
その際兄弟という名目で少年と同居する事になったのだが、何故か任務終了後も居座り続けている。
「ご飯食べる? パンとオムレツとサラダとオニオンスープとオレンジペコ」
「頂くわ」
「んじゃお皿出して」
「はいはい」
少女はまだ眠気が残っているのか、あくび交じりの返事を返すとのろのろと食器棚へ向かっていった。少年はオムレ
ツをひっくり返し、同時に横目でスープの鍋を見る。
「はい、お皿。持ってきたよ。サラダ切ろっか?」
切りかけのレタスとトマトを指で転がしながら少女は言った。
「いいよ、僕がやる。座って待ってな」
「サラダぐらい作れるわよ」
「寝ぼけ眼で包丁握らせるわけに行かないよ。それより出来た料理から運んじゃって」
焼きあがったオムレツを皿に乗せ、再度フライパンに集中する。二つ目のオムレツのためにバターを引き、片手で卵
を割った。軽く混ぜてから熱フライパンに投下。バターと卵の焼ける匂いが空腹を刺激する。
目線を上げると、少女が鼻歌を歌いながらサラダの取り皿とスープ、フォークとナイフを並べていた。薄手の寝巻き
姿で、髪は寝癖で少し跳ねている。テーブルに大きく身を乗り出した際に寝巻きの胸元が垂れ下がり、奥には滑らかな
肌と膨らみ皆無の胸、桜色の突起が二つ――
「どうかしたの。さっきからわたしの事じろじろ見て」
「いや何も」
言わないほうが自分の身の為だと、少年は思った。
「……ってフライパン! オムレツ焦げてる!」
「え、うわっ」
「そうだ、あなた今日休みよね」
「土曜日だからね。でなきゃ昼に寮になんか居ないよ」
食事中、少女が唐突にこんな会話を切り出した。
ちなみに焦げたオムレツは少年が食べている。
「じゃあさ、お買い物に付き合ってくれない?」
「要するに荷物持ちでしょ」
「むぅ、まあ平たく言えばそうだけど。でも、たまには腕とか組んで外歩いたりしたいじゃない」
少女のフォークがトマトを突き刺した。少し力が篭っていたから、少年の言い草に拗ねているのは気のせいではないだろう。
「デートなら兎も角、タダの買い物だろうに」
第一腕を組まれては満足に荷物持ちも出来やしないだろう。
「勿論デートよ。だって恋人同士でしょ、私達」
「へ?」
いつから恋人になったのか。
少年の端整の顔は、思わず聞き返した時に大きく崩れた。
「……い、いつからそうなったんだっけ?」
「だって……えっちしたから」
答える少女は目線を逸らし、顔とほのかに赤くしながら上目使いで少年を見つめ、言った。
「えっちな事とかするのって恋人同士だけなんでしょ?」
それから少しして。
駅に向かう人の流れの中に、嬉しそうに少年の腕にしがみつく少女と、過去の過ちの為に魂の抜けかけている少年の姿がありましたとさ。
「ってここ何?」
少女の案内でついた先は大通りから少し横に逸れた、雑居ビル群の一角。黒地にピンクの文字で店名が書かれた看板が明らかに怪しい。
少なくともデートで来る場所ではないだろう。
「こういうお店って『あだるとしょっぷ』って言うのかしら? ウィザード向けのお店だって言うから私たちの年でも大丈夫よ」
「……誰の入れ知恵か聞いても良いかい?」
「探偵のおじさん」
ああ、あの工藤●作に似てる龍使い(サンプルキャラクター参照)か。
今度事務所で自爆してやる。
「じゃ、行きましょ」
「いやいやいや。当然のように入ろうとしないで」
余りの展開に脳がついていけず、引っ張られた腕をとりあえず引き戻した。
何が悲しくて初デートがアダルトショップなのか。
「何で? お店に入らないと買えないじゃない」
「いくつか質問してもいいかな。駄目って言われてもするけど」
「何かしら」
「一体このお店で、どんな品物を何の為に為に買うのか」
「何の為って……私たちの為に」
町名の吸血鬼らしく表情には余裕があるように見えるが、その顔色は沸騰しそうなほど真っ赤になっている。少年の腕を掴んでいる小さな掌も、じっとりと汗ばんでいるのが感じられた。
「だ、だって、あれから一度もしてないし、最初があれだったから普通のことしても物足りないし……そもそも、初めての私にあんな事しておいて、後になって知らない顔なんて酷いんじゃない?」
「あ、いや、確かにそうなのかも知れないけど、でもさ」
「言い訳無用。私をこんな女の子にしたの、あなたなんだからね」
小悪魔のような笑みと上目遣い。ここに入るまでは梃子でも動かないだろう。
少年は観念して周囲を見回す。幸い裏通り、しかもまだ日も高いせいかアダルトショップの前に人はいないが、立ち止まるのは得策ではないようだ。
「わかった。入ろう……人が来る前に」
盛大なため息と共に、細く薄暗い階段に一歩踏み込んだ。左に少女の手を引いて、その足取りは重く、緩慢な動作で段を上っていく。
「一つ聞き忘れてたわ」
「なに?」
もう諦めたように少年が答える。
「あなたどんなプレイが好み? 前にしたときは結構サドっ気有ったみたいだけど」
「……普通でいいです。超ノーマルです」
「そう。そんな感じには見えないけどね」
「……」
何か釈然としないような、言われても仕方ないような気分を抱えながら、異様に長い階段を上り続ける。恐らくはウィザードしか入れないような、何らかの魔術的な仕掛けが施されているらしい。
店に入る前からこの調子である。恐らく魔術を利用した性具もあるんじゃないだろうか。
魔道技術の無駄遣いだと心底思う。
「あ、あのドアかしら」
「そう見たい、だね」
優に五分以上階段を上り続けようやく見えてきたのは、小さな貸事務所のような安っぽいドア。「アダルトショップ」の札が掛かっているから間違いない。最も間違えるような階段の分岐は無かったのだが。
ドアノブを引いてゆっくりと引き開けると、
「いらっしゃいませー!」
場違いなほど元気な女性の声が響いた。
「にゃ、カップルでご来店ですか。これまた可愛い彼女さんです〜見た目どおりのお年じゃないですよねぇ。出ないとお店は入れませんから」
出迎えたのは高校生ぐらいの少女である。顔はかなり童顔で可愛らしく、胸は皮のビキニのような物のみ、下半身はジーンズをギリギリまでカットした、これまた下着のようなズボン。そして頭頂部には猫とも犬ともつかない一対の耳。
細い腰もすらりとした脚も丸見え、さらに上下どちらの服も身体に行ったり張り付いているのでボディラインははっきりと判る。胸も尻も絶妙な肉付きで歩くたびにかすかに揺れるので目のやり場に困る。
まあ店の内容を考えれば露出程度で恥ずかしがっていては駄目なのだろう(何が?)。
「お客様初めてですね〜、倦怠期ですか、それとも単なる好奇心? どちらにせよここならお悩み解決、今晩から毎日が楽しくなる事間違い無しです。何をお求め?」
何からと聞かれても、何が売っているのか念頭もつかない二人は答えに詰まった。少年は一通り周囲を見回すが、何に使うのか大体判るもの、使い道がよく判らない物、その他薬瓶やら縄やら羽箒やら首輪、手錠、目隠し……
少女もやはり目移りしすぎて目標を定められなかったらしい。素直に店員に向かって口を開いた。
「私達こういうお店初めてなの。道具とか、その、初めてだし……お勧めとかあるのかしら」
「はいはい、初めてのお客様でしたらこちらにど〜ぞ。比較的マイルドなものが揃ったコーナーがありますので。何なら実際にお試しいただけますよ?」
「でも私使い方とか……」
「手取り足取りご指導して差し上げますとも」
少女は店員に導かれるまま、店の奥へ入っていく。
ふと横の棚を見ると、少女と関係を結ぶきっかけとなった雑誌の最新号が平積みになっていた。
他にも『エレンディル・トラベルガイド:ないとば〜じょん』『Venus in ミッドガルド』『煉獄愛欲彷徨』『亜侠の選ぶ風俗100』『マス掻きの前と後にSirと言え』『ワーディング野外プレイお薦めスポット(売り切れ!)』など。
何だか対象者のよく判らない本もかなり含まれていた。明らかに異世界の本だろこれ。
「まずは定番ですけどこれ。リモコンを操作すると小刻みに振動するんです」
「あ、本とかで見たことあるわそれ」
「エーテル光素を利用したリモコンですから何万sq先でも操作が届きますし。リモコンだけ彼氏に渡してプチ羞恥プレイとか出来ますヨ」
アダルトグッズの定番、ローターと呼ばれる奴である。振動部分は鶉の卵程の大きさがあり、局部に押し付ける、或いは中に挿入して使用するものとして標準的な大きさであろうか。
しかし女性というのはあのような異物を体内に入れて気持ちよくなれるものなのか、ここに来てやっと空気に慣れ始めた少年はそんな事を考えていた。
「初心者の方にも使いやすいですし、応用効きやすいのでお薦めですね。お安くしときますよ」
「あ、そういえば」
「あら、どうしたの?」
少年があることを思い出し声を上げた。そして少女に問いかける。
「いや……君さ、お金持ってたっけ?」
「持ってるわよ」
さも当然というように少女は返した。
「ウィザードの仕事があるんだし、貴方と同じで相当の報酬は貰ってるわよ」
「……でも家計は全部僕が出してるよね?」
「何けちな事言ってるのよ。私たちの収入からしたらたいした事ないじゃない」
「そういう問題じゃないと思うんだけどなぁ」
彼女が来てからというもの、ゴミ箱を見るとほぼ毎日スナック菓子の袋があったりする。吸血鬼は新陳代謝が起こらないゆえ、食べても太らないというのがそれに更なる拍車をかけている。
そのため、少年宅のエンゲル係数は少女が来る以前と比べて数倍に跳ね上がっている。といっても家計が苦しいかと聞かれるとそうでもないので、特に責める気も起きないのだが。
美味しそうに食べる少女の顔を見ていたいと言うのも、少し、あるのだが。
「ま、怒ってるわけじゃないし。でもここの買い物は自分で出してよ?」
「判ってるわ。あ、これ頂くわ」
「毎度〜。で、お幾つ?」
「え、そうね……」
少女は自分の体を見下ろし、ひい、ふう、みいと指折り何かを数え始めた。
「8つ」
「8つ!?」
「ローター8つお買い上げ〜」
「そんなにどこにいくつ使うんだよ!」
少年達が両手に無地の紙袋(無地であるあたりが店の気配りなのだろう)を下げて自室に戻った時、太陽は既に傾き、空は赤く染まり始めていた。
店員が次から次へと取り出していく見慣れないアイテムを、少女が二つ返事で買い上げていくさまはまさに圧巻であった。
「さて」
主に荷物を持っていたのは少年のほうで、少女といえば元気なものである。今まで荷物を運び終えた少年は床に座り込むと、少女がおもむろに口を開いた。
「脱いで」
「は?」
「は? じゃないわ。これからいっぱい楽しむつもりなんだから」
そういって、少女は少年の上に覆いかぶさった。
「ちょ、い、今すぐ?」
「そうよ」
「せめてお風呂は言ってからとか」
「駄目。だって」
ワンピースの裾を持ち上げ少年に見せ付ける。
「もうこんなになってるんだもの。いまさら我慢なんて出来ないわ」
薄いピンクのショーツはに染みどころではない、むせ返るような女の匂いが漂い、股間から太ももに至るまできらきら輝く露で濡れていた。
「電車の中で大変だったのよ。帰ってきてからの事を考えると、それだけで体か熱くて……ここが痺れてくるの」
びしょ濡れのショーツに指を引っ掛け持ち上げる。細い紐のようになって食い込み、愛液の雫が滴った。
視線が釘付けになった。そんな少年の姿を見て、少女は熱を持った瞳で艶然と笑って見せた。
布地越しに分かるほど充血した淫核に自分の指を添える。ざらついた布の感触が快楽となって身体を走った。
「あなたが寝てる、となりで……あっ……こうして、あなたの事考えて……たのに」
少女の告白は続く。その間も、目の前で繰り広げられる淫靡な指の動きは止まらない。
「ほんとは、あなたに触っ、っん……欲しかった……の、あ、ああぁっ」
突然声が乱れる。
見ているだけだった少年の唇が、少女の淫裂に口付けした。
「してあげるよ。僕にこうして欲しかったんだろ」
「えっ、あっ、ん、吸っ、ちゃだめ……ぇ」
ショーツを横にずらし、舌を差し込んだ。そのまま容赦なく奥を目指して舌を差し入れる。
「いや、あ、っそんな急に……んんっ、激しす、あっ」
「目の前であれだけ挑発してくれたんだ。何言っても止めないよ」
少女の腰を抱き寄せ自分の上に重なるように引き倒す。少女はされるがまま、少年の胸に顔を預ける形になった。
「何も言わないわ」
潤んだ瞳で少年の顔を見上げ、微かな声で言った。
「……私、貴方にされることなら、何でも嬉しいから。酷い事も、えっちな事も、恥ずかしい事も……いっぱいして」
わずかな微笑を浮かべ少年の首元に頭をすり寄せる。甘える子猫のようなその仕草、視線や声の全てが、少女への愛情で満たしていった。
だから、ほんとは最初にして置きたかった事を、今することにした。
「目、瞑ってて」
「……うん」
何の疑いも無く両目を閉じる。それを確認してから顎を少し持ち上げ、一気に唇を奪った。
「ぅん、あむ……」
唇の端からわずかな吐息が漏れた。その呼気すら逃すまいと舌を口内に割りこませると、少女の柔らかな舌と触れた。迷わず絡ませる。たっぷりと唾液を乗せた舌同士が互いを味わうように蠢く。
歯の裏を舐め回し、お互いの唾液を混ぜ合わせ、飲み下す。唾液の一滴が溢れ、少女の顎から首筋を汚していく。
少年の舌がその雫を追う。その過程で少女の首筋を丹念に舐め、音がするほど強く吸い上げた。後には赤い後が残る。
その間に腕はアダルトショップの紙袋を漁っていた。やがて数個のローターのパッケージと一瓶のローションを掴み取る。
「……脱がすよ、いい?」
「うん……でも」
「でも?」
あのね、と前置きしてから、少女は言った。
「ゆっくりだと恥ずかしいから、早く脱がしてほしいの」
「恥ずかしがってる顔も絶対可愛いと思うけど」
「……意地悪」
「何してもいいんだろ」
とたんに顔を真っ赤にして無言で頷く。
「ほら、今凄く可愛い」
「……ばか」
何とも弱々しい抗議であった。
少年はワンピースのボタンを手早く外し、方からそっと滑らせた。最初に華奢な両肩が現われて、次に胸、子供の身体ながら細い腰……そして腰を浮かせてすべて脱がした。
その肢体は全て一点の曇りすら無い滑らかな肌と柔らかな曲線、女の子らしい甘い香りで構成され、体温によって薄い桃色に色付いている。
「最初はちょっと冷たいかも知れないけど」
「あ……それ、どうやって使うの?」
「知らないで買ってたの? でもすぐに判るよ」
ローションの瓶を開け、甘ったるい匂いの液体を掌に開ける。そしてゆっくりと少女の胸に塗りたくった。
「んっ、冷た……」
「ちょっと我慢してて」
粘液に包まれた小さな胸を絞り出すように弄ぶ。そうすると最初は弾力のあった突起が、少しずつ硬くなり始める。
「ふあっ、ああ……あ、い、息が掛かって……」
「凄いなこれ。息が掛かるだけで感じちゃうんだ」
試しにその桜色の突起めがけて、強めに息を吹きかけてみる。
「あ、あうっ、あ、あああぁッ!」
まるで皮膚を染み透って吐息が届いたような感触。余りに強い感覚に体を反らせた時、少年の唇に直接突起が触れた。
それが偶然だと判っていながら少年は意地の悪い解釈をした。
「舐めて欲しいの?」
「え? あ、い、ち、違……」
答えを待たず口に含んだ。キャンディのように強く唇に挟み、先端を小刻みに舌で舐める。
「ひあっ、す、吸っちゃ、駄目、ぇ……っ」
さらに強く吸い上げる。吸う強さに比例して少女の声が大きくなっていく。開いた左の手はもう片方の乳首に対しローションを塗りこむようにマッサージする。
体の痙攣がさらに強くなる。
「あ、あぅ、う……ん、ひぁ、あ、ああ、あああっっ!」
最早声にならない悲鳴を上げて、絶頂が近い事を示している。
そしてその声が最高潮に達するその瞬間、少年は口で強めに甘噛みすると同時にもう片方を抓り上げた。
「いぎ、い、か、あ、ああぁぁぁっっ!」
絶頂に更なる追討ちが加えられ、その証として少女の股の間から二種類の液体が噴出す。片方は透明の、もう片方は薄い黄色の液体。
「っはぁ、はぁはぁ……」
「またお漏らししちゃっんだ」
呼吸が落ち着いてきた今までも断続的に身体を震わせ、そのたびに短く失禁する少女を見て、満足そうに笑った。
同時に少女の死角ではローターが開封され、そのうちに二つが手に握られた。ひそかに少女の蜜壺に狙いを定める。
「だ、出したくて出してるわけじゃないわよ……」
「判ってるよ。だからお漏らししないように、少し練習しなきゃね」
反論を待たずに唇を重ねる。そうやって視界を塞いでから、絶頂を迎えたばかりの身体に二つのローターを押し込んだ。
「んっ、んむ、んんんっ! 」
予期しなかった異物の感触に躊躇う。構わず親指を触手に変形させ、届く限り奥まで押し込む。
そして、間髪いれずにスイッチを入れた。
そして突如襲い来る、突き上げるような快楽の波。
少女の体にとって二つのローターによる圧迫感は並大抵ではなく、その振動は膣全体を揺るがすように少女を追い詰める。
しかしこれで終わらせるつもりは無い。少年は少女の体を床に押し倒し、両腕をその頭上に押さえつけた。そして口付けしたままの唇を一度開放した。
「ん、あんっ、駄目、これ出してぇっ! まだイったばっかでっ、また、またイっちゃうぅっ!」
「まだイっちゃ駄目だよ。僕もそこに入るんだから」
「……? っ! いや、これ以上何も入らないよぉ!」
涙目の訴えは無視された。開いている腕でズボンのベルトを外し、チャックを下ろす。真っ白な肌に包まれた少年のそれが露になる。
その大きさに少女の顔が恐怖で引きつる。もう声を発する事も無く、ただ顔を横に振るだけだ。
「……行くよ」
洪水と表現してもよい程潤んだ処女の膣口に先端を宛がう。
「や……やだぁ……」
「煩いな、僕がすることなら何でも嬉しいんなら……少し黙ってろよっ!」
冷たく言い放ち、手で口を塞ぐ。そして少年は、自分の欲望を一気に突き刺した。
少女の純潔だった事を証明するかのように、一筋の血が零れた。
「……っ」
ただでさえ狭い上痛いほど締め付ける少女の柔肉。それでも中で蠢くローターを押しのけながら、少女の体内に深く潜り込む。
少年の恐慌を一身に受ける少女は、もう何も喋らない。ただ硬く目を瞑り、非情なほどの快楽と苦痛に耐えるだけだった。
腰を前後に揺らすたびに少女の蜜が溢れる。それが潤滑剤になり動きがさらに激しくなる。
少年の体格と比してもかなりの大きさである。少女にとっては全部飲み込むのも難しいだろう。だが少年は最奥に叩きつけるように動き続けた。
腰が数往復するごとに少女が絶頂に震える。その度に少年の肉棒が強く締め付けられ、それが更なる快楽を呼ぶ。そして少年の動きもますます激しくなる。
少女とって天国とも地獄ともつかない循環が続く。少年は口をふさいでいた手を離し、少女の上に四つんばいになるように身体を支えている。
少女はもう動かない。ただ口からと息が漏れるだけで、閉じていたまぶたも開かれウツロな視線で少年を見つめている。
愛液がかき混ぜられて泡になるほど動き、少女が肉棒を締め付けるだけの肉塊と成り果てた頃、少年は最初の恍惚の時を迎えようとしていた。
発射の瞬間、今までで一番深く腰を密着させた。
「くぅっ……だ、出す、よ……っ!」
欲望が放たれる。少年は身体を強張らせ、しかし一滴でも多く注ぎ込むように腰を動かす。
凄まじい快楽と開放感が少年の頭を支配していた。そして一拍おいて感じるのは震えるほどの征服感。
「あ……」
絶頂の連続と身を裂くような苦痛で正気を失った少女の頭は、もはや体内に染み込む少年の熱しか認識していなかった。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
少年の荒い息遣いが響く。
少女は動かない。小さな胸が上下し、息をしていることが判るだけだった。
少女の名前を呼ぶ。反応は無い。
もう一度呼ぶ。答えない。
ただ感情の無い瞳が少年を、いや、少年の向こうにある天井を見ていた。
そこまで来て始めて自分のした事を思い出した。
処女であり、幼いままの身体を何の手加減も無く快楽の道具にしたこと。
心地よい疲労感は全て凍りついた。代わって圧し掛かるのは罪悪感と恐怖。
大声で名前を叫んだ。肩を掴み揺さぶるが、それでも反応は無い。
今から過去に戻って自分を切り刻んでやりたい衝動に駆られた。そしてその衝動すら免罪符にならないことに気がついた。
もうあの無邪気な笑顔が見られないのかもしれない。そう思うと、自然と涙が零れた。
一度溢れた涙は止まらず、少年の頬を濡らしていく。雫は少女の柔肌を濡らした。
少女の体を掻き抱き、嗚咽を隠すこともせず子供のように泣き続けた。
不意に、頬に暖かい感触を感じた。
それは少女の掌の温度だった。
少女の顔を見る。彼女は笑っていた。
「泣いちゃ、やだよ。わたし、うれしかったんだから」
声が出なかった。
少女はただ優しく笑っていた。
「少し痛くてびっくりしただけだから……そんなに泣かないで」
少女の指が涙を拭った。もう涙は流れない。
「だいすきだから」
少年の胸に顔を寄せながら、少女が言った。
全身が暖かさに包まれたように少年は感じた。その暖かさを逃がさないように強く抱きしめた。
「だいすき、だよ」
少年に答えるように少女の腕も背中に回された。
少年は最愛の人の言葉に答えなければならない。
「僕も」
情けないほど涙声だ。でも言わなければならないと思った。
人造人間の少年にとって、かつて自分は世界を守るための道具だった。
人を守るのは当然のことで、自分の価値は常に他人より下だった。
しかし今の少年には、自分の生い立ちや用意された存在意義の全てがどうでも良かった。
自分の意志で決めた守るべき人を見つけたと確信していた。
「大好きだよ」
「……うんっ!」
少女が笑った。
先ほどの包み込むような優しい微笑ではなく、子供らしい無邪気な笑顔だった。
「ところで」
「?」
「いい加減、んっ……抜いて、くれない、あんっ、かなぁ? ローターも……」
少年は少女と繋がったままだった事に、今頃気がついたのだった。
翌日。
「御飯まだ?」
「今作ってるよ」
例によってあまり起きるのが早くない少女は十時過ぎに目を覚まし、素肌に毛布一枚と言う格好で朝食の催促をする。
「手伝いたいのは山々なのよ?」
「……」
「でもね、腰が動かないのよ。誰かさんが予想以上に元気だったせいで」
実はあの後二人でシャワーを浴びようとしたのだが、少年の行為が激しすぎたのか腰を痛めたらしく。
かくして少女はベッドの中で日がな一日ごろごろしており、少年はその世話を焼いているのだった。
自分の所為だと言うのは分かっているのだが……少年はフライパンを動かしながら、密かにため息をついた。
同時に、今日が日曜日で本当によかったとも思った。
「出来たよ」
「あら美味しそう」
「ここ置いておくからね」
「食べさせて」
少年、お盆をサイドテーブルに置いたまま硬直。
「あーん」
雛鳥が餌を待つように口を開ける少女。シーツは膝の上に掛けられたのみで、なだらかな胸も下腹部も少年の目に晒されている。
「あ〜ん」
仕方なくスクランブルエッグをフォークで突き刺すと、
「口移しよ。親鳥がやるみたいに」
どうやら本当に雛鳥のつもりだったらしい。
「でなきゃ食べないもん」
「……」
「あ――――――ん」
少年は観念して、卵を口に咥える。
「んっ……」
「――――これで良い?」
満足そうに頷く。
「次スープ」
「もしかしてスープも口で?」
「当然ね」
全部食べきる頃には朝食が昼食になっているだろう。
それでも、今は彼女のお願いをため息交じりで聞いていたい気分だった。
「これ食べ終えたら……」
「食べ終えたら?」
スープの器に口をつけながら少年は聞き返した。
「昨日の『続き』、しましょう? 次はそんな痛く無いと思うし、もっと頑張れると思うの。それにね……」
少年の顔を見上げて、楽しそうに微笑みながら。
「今度は私が、あなたのこと気持ちよくしてあげたいの」
結局、月曜も学校を休む事になった。
寝室で、居間で、風呂場で。
『気持ちよくしてあげる』宣言に偽りは無く、幾ら人造人間でも……弾切れが無いわけではなかったである。
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